オリゴDNAでナノ構造を構築する手法は日進月歩を遂げ、最近では様々な形のDNA origamiやDNA puzzleが開発されている。これら「DNAナノアーキテクチャ」を構築する唯一の駆動力はDNA二重鎖形成であり、ここに別の駆動力を付与することができれば多彩な構造体への展開が期待できる。そこで、新たな駆動力としてホスト・ゲスト錯体の会合に着目し、ホスト・ゲスト錯体を組み込んだDNA超構造体の創成を目指すことにした。DNA超構造をホスト・ゲスト錯体の会合・解離によって動的に制御できれば、巨大な分子を構成要素とするシステム創発に向けての足掛りになると考えられる。 我々は平成21年度において、DNA二重鎖の一方の5'末端にβ-シクロデキストリンを、その相補鎖の5'末端にアダマンタン誘導体を代表的なクリック反応であるHuisgen反応で導入した修飾DNAの合成に成功した。これらがハイブリダイズすると、シクロデキストリンとアダマンタンの錯形成を介してDNA二重鎖が自己集合すると予想される。平成22年度においては、修飾DNAの塩基数と二重鎖融解温度(T_m)との関係を調べた。実際ハイブリダイズさせ、その融解温度(T_m)を測定したところ、例えば塩基数が7の場合、非修飾DNAに比べてT_mが約20℃上昇した。この融解温度の上昇は、ホスト・ゲスト錯形成を介してより鎖長の長い自己集合体が形成されていることを示唆している。さらに、非修飾DNAではT_mを観測することができない6merの修飾DNAは、約30℃という比較的高いT_mを示した。
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