分子クラスターと単層カーボンナノチューブ(SWNT)からなる複合体を作製することによって、活物質である分子クラスターからのスムーズな電子移動やリチウムイオンの素早い保持、拡散が予想され、より良いサイクル特性と急速充電が可能になると考えられる。本研究では、携帯電話やポータブル機器などに利用される次世代エネルギー材料の開発を目指して、SWNTと分子クラスターからなる高次構造体の創製と、正極材料への応用を試みた。 SWNTを懸濁したトルエン溶液に、(^nBu_4N)_3[PMo_<12>O_<40>](POM)のアセトニトリル溶液を滴下し、遠心分離、真空乾燥によってSWNT-POM複合体を得た。TEM及びEDXによって複合体の形成を確認した。 また、SWNT-POMの電池特性を調べるため、SWNT-POMをカーボンブラックと混合した正極材料を用いて、コインセル型のリチウム電池を作製し、電圧範囲4.2V-1.5V、電流1.0mAで定電流充放電試験を行った。POMのみを活物質とした場合、容量は260Ah/kgであったが、SWNT-POM複合体では、容量は320Ah/kgとなった。これにより、複合化による容量の増加が確認された。また、8C(充電もしくは放電にかかる時間が8分のときの電流値:5mA)で充放電試験を行ったところ、放電容量は150Ah//kgであった。これはIC以下で測定した従来のリチウムイオン電池(LicoO_2)の容量148Ah/kgに匹敵しており、急速充放電が可能であることを示している。このように、分子クラスターとナノカーボンの複合化により、急速充放電、高容量化が実現できた。
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