相補的な塩橋を用いた「動的な」シリンダー型多重らせんやインターロック化合物などのトポロジカル超分子を構築するための一般性の高い手法の確立、さらに、トポロジカルキラリティーの制御とその実現、構造と物性との相関の解明、環境の変化に動的に応答しうる機能の創発を目指している。 平成21年度に引き続き、アミジンとカルボン酸からなる相補的な塩橋ユニットを用いた二重らせん高分子・超分子の合成研究を推進した。まず、キラルなアミジンとアキラルなアミジンの共重合体をアキラルなカルボン酸のホモポリマーと有機溶媒中で混合すると、相補的な塩橋を介して二重らせんポリマーを形成した。二重らせんポリマーの円二色性(CD)スペクトルを測定したところ、アキラルアミジンユニットの吸収部位に明確な誘起CDが観測された。このことから、この二重らせんポリマーは「硬い」構造を有しており、キラルユニットからアキラルユニットヘ不斉伝播が効率よく起こっていることが明らかになった。一方、人工的に二重らせん構造を構築する研究の過程で、オリゴフェノールとNaBH_4を反応させることにより両末端がスピロボレートで架橋され、中心にNa^+イオンを取り込んだ二重らせん型錯体が得られることを見いだした。この二重らせんの溶液にクリプタンドを加えると、らせん内部のNa^+イオンが取り出され、長さが二倍以上に伸長した二重らせん構造をとることが明らかになった。そこにNaPF_6を加えると定量的にもとの二重らせんに縮んで戻った。光学分割した二重らせんを用いた実験から、この伸縮運動は一方向捻りを伴ったものであることが分かった。
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