本年度は、現状の実験系が抱える種々の問題点を解消するための新規極微量チャンバーの試作と評価、さらには酵素分子が基板表面へ吸着するのを防ぐためのコーティング法の検討を行った。具体的には、新規極微量チャンバーの試作と評価に関しては、PDMSシートの柔軟性を利用することで、空気圧を利用して計測対象となる酵素溶液をチャンバーの中に封入できるようなデバイスを試作した。これを用いて蛍光ナノ粒子や酵素溶液の封入を試みたところ、チャンバー外へ溶液が漏れるといったことなく、封入できることが分かった。しかしながら、チャンバーの位置する領域によってかかる空気圧が若干異なるためか、チャンバーの位置によってチャンバーサイズが異なる現象が観察された。今後は、均等な空気圧がかかるように、デバイスの構造を改善する予定である。一方、酵素分子が基板表面へ吸着するのを防ぐためのコーティング法として、Poly (N-hydroxyethyl acrylamide)をガラス基板とチャンバーにダイナミックコーティングした後、酵素活性測定を行ったところ、各サイズのチャンバーにおいて酵素活性の若干の向上は見られたものの、依然としてチャンバーサイズに応じて酵素活性が低下していく傾向が観察された。以上のことを踏まえて、今後はより定量的なデータを取得するためのデバイスの改良と同時に、封入後の酵素分子を再度取り出して酵素活性を測定するなど、空間サイズが酵素活性に与える影響の本質に迫っていく予定である。
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