研究概要 |
ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVCz)は蛍光性、光導電性を持つ高分子として注目されており、様々な研究が行われている。バルク状態のPVCzは高分子鎖間の相互作用が光物性に大きく影響を及ぼすと考えられており、PVCz一本鎖としての光物性評価は重要である。一方、2nm以下の均一な細孔を有する多孔性金属錯体が近年注目を集めている。我々はこれらが有するナノ細孔を重合反応場として利用することで、生成高分子の構造制御や、複合体の物性制御の研究を行ってきた。本研究では、一次元チャネルを有する多孔性金属錯体の細孔内でPVCzを一本鎖状態で合成し、その光物性について検討を行った。さらに複合体から単離したPVCzのモルフォロジーがホスト結晶の形状を保持していることを見出した。[La(1,3,5-benzenetrisbenzoate)](1)が有する一次元チャネル(細孔サイズ=1nm)にN-ビニルカルバゾールと重合開始剤を導入し、窒素雰囲気化、70℃で重合を行った。NMR、GPC等の測定によりPVCzが細孔内で良好な収率で合成できていることを確認した。1の細孔サイズからPVCzは細孔内で一本鎖状態と考えられ、MDシミュレーションからもそのことが示唆された。得られた複合体(1⊃PVCz)の蛍光スペクトル測定の結果、380-500nmにPVCz由来の発光が見られた。通常のバルク状態のPVCzの蛍光スペクトルと比較すると、バルク状態のPVCzに見られる370nm付近のショルダーが1⊃PVCzには見られなかった。PVCzはカルバゾール環のスタッキング状態の違いにより370nmにpartial overlap型のエキシマー発光ピークが、420nmにfull overlap型のエキシマー発光ピークが観測されることが知られている。このことより、PVCzは細孔内においてカルバゾール環のfull overlap型がより多くなるような配置で並んでいることが明らかとなった。このことはMDシミュレーションの結果にもよく合致した。
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