1. これまで、ほとんどの研究では電極材料には金が利用されていたのに対し、ニッケルを利用した量子接点の測定と分子接合の計測を試みた。その結果、スピン縮退が解けたと解釈される0.5GO(GO=2e2/h)のコンダクタンス値に安定な電気伝導度が存在すること、金で観測されたのと同様の二値化ノイズが発生することが明らかとなった。また、ニッケル電極を用いた分子架橋接合も金の時と同様に作製できることが分かった。分子架橋接合においても二値化ノイズが発生することが明らかとなった。これらの現象から二値化ノイズは電極の種類によらず発生する普遍的な現象であると予測できる。 2. 電極/単分子/電極接合の電気伝導度を測定するための計測装置を作製した。この装置では、4Kまで冷却可能なクライオスタットを利用し、極低温領域から室温領域まで温度を変化させ測定が可能となった。この装置により、ゆらぎの温度依存性の測定が可能となる。電気伝導度に温度依存性が見られなかったことから、チオフェンユニット14までのオリゴチオフェン分子ではトンネル伝導が主体と結論づけられた。 3. 高性能電流増幅アンプを導入し、0.01pAのノイズレベルでの電流計測が可能となった。市販品としてはきわめてノイズレベルの低い物であり、通常の電子工作の範囲で同等の性能を実現する事は難しい。ほとんどのノイズ計測目的には利用可能といえることから、低ノイズアンプの開発の優先順位を下げ、このアンプとロックイン検出などを利用したより低ノイズの検出を行うための測定装置を計画中である。
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