1.これまでの研究では、電極/単分子/電極接合の電気伝導度測定には金が利用されていたのに対し、ニッケルを利用した量子接点の測定と分子接合の計測を試みた。その結果、ニッケル電極を用いた単分子接合も金電極と同様に作製できること、分子架橋接合においても二値化ノイズが発生することが明らかとなった。これらの現象から二値化ノイズは電極の種類によらず発生する普遍的な現象であると予測できる。 2.外部より磁場を印可することによりニッケル電極の磁化の変化に伴う接合の抵抗変化を観測することに成功した。磁場の印可角度依存性などからナノ接合では通常のバルク電極ではみられない巨大な異方性磁気抵抗効果が観測されることを明らかにした。この結果は、単純な炭素でできた単分子接合が、スピントロニクスの発展に重要な役割を果たすことを示唆している。 3.単分子接合の電気伝導度の温度依存性から、チオフェン14量体では室温より低温では電気伝導度が変化しなかったのに対し、室温以上では温度の上昇と共に電気伝導度が増加した。この現象は、室温以下ではトンネル伝導が、室温以上では熱励起型の伝導が主体となっていることを示し、一つの分子で二つの伝導機構が取り得ることをはじめて見いだした。 4.これまでに利用されることのなかった水酸基を用いても金電極に分子をアンカーリングさせ単分子接合を作製可能であることを初めて明らかにした。水酸基は分子への導入方法も確立されており、ダイマー形成などの問題が知られているチオール基よりも利用しやすい。この結果により、より溶解度が高く、かつ安定な分子材料を利用して単分子接合の研究が可能となる。
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