本研究では、様々な時空間挙動を発現することが知られているBelouzov-Zhabotinsky(BZ)反応を利用して、Turingパターンと呼ばれる時間的に定常な空間周期濃度パターンを発生させ、このパターンに基づいた空間周期形状パターンを形成させ固定化する技術の開発を目指している。本研究計画の1年目となる平成21年度は、Turingパターンの形成には、反応系で抑制因子として振る舞う中間体が活性因子として振る舞う中間体よりも拡散し易い条件となることが必要であり、まずはBZ反応で重要な役割を果たす化学種と親水性ポリマーとの親和性に着目し、ポリアクリルアミドゲル上に様々な深さでフェロインを触媒としたBZ反応が進行する溶液を展開し、その溶液中に発生する時空間挙動を観察した。その結果、溶液の深さがある臨界値以上の場合は、ガラス製のシャーレ上に反応溶液を展開した場合と同様に化学波の発生が観察されたが、臨界値以下の場合はTuringパターンとみられる時間的に定常な空間周期濃度パターンの形成が確認された。ところが、フェロインの代わりにルテニウムトリスビピリジル錯体を触媒として同様にBZ反応を行なった場合は、ガラス製シャーレ上での反応と同様に化学波の発生のみが観察され、Turingパターンは形成されなかった。また、BZ反応においては、ラジカル種の発生がその化学ネットワーク中で重要な役割を果たすことに注目し、フェロインを触媒としたBZ反応系に重合性モノマーであるアクリルアミドを添加したところ、Turingパターンと思われる時間的に定常な空間周期濃度パターンの発生が確認された。
|