階層、次元が単一性ではなく、低次元性分子集合挙動からの非平衡条件を介した高次元性構造体への変遷は、時に単なる分子レベル、単純な分子組織構造では予期することのできない、創発的な機能が発現される。当新学術領域研究「分子ナノシステムの創発化学」のAO4班では、ボトムアップ/トップダウンプロセス融合による機能創発が主題となっており、本研究者も公募研究として、分子の自己組織化、階層組織化される構造体(ボトムアップ)と金属蒸着、構造転写技術(トップダウン)などの融合技術による、分子の自己組織化由来の機能性材料の創製に着眼して研究を遂行した。 例えば、カーボンナノチューブ(CNT)を含むフラーレンのマイクロ微粒子を創製し、CNTの持つ近赤外光吸収による発熱効果を活用する技術を開発した。近赤外光照射により、微粒子の溶融が観察される温度(220℃)を規定することで、光学顕微鏡レベルでモニタリングできるCNT局所加熱温度指示計とした。本技術は、フォトセラピーへのCNT利用を注意喚起する意味合いを持つ。 次に、アルキル長鎖導入型フラーレン誘導体の気/液/液界面における、非平衡条件を介した自己組織化に関して、その創発現象の解明を試みた(第2回公開シンポジウムにて発表)。ナノサイズの分子の自己組織化、階層化、また気/液界面からの結晶化、溶液中での分子濃度勾配効果などによる、ヘキサゴナル半球微粒子アレイの創製に成功、その形成メカニズムに関して詳細に検討するに至った。このアレイは、ミリメートル四方サイズ超の面積でアレイ化されており、自己組織化を導く分子間相互作用が長距離伝搬されている(創発現象)ことを証明した。
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