上流ORF(uORF)にコードされる新生ペプチドが自身を翻訳したリボソームに作用して翻訳アレストを引き起こし、それによって下流のORFからのタンパク質合成が抑制されると考えられるシロイヌナズナの3つの遺伝子について、翻訳アレスト機構の解析を行った。まず、シロイヌナズナの培養細胞の一過的発現系を用いたAlaスキャニング解析により、翻訳アレストに重要なuORFペプチド内のアミノ酸の同定を行った。その結果、いずれのuORFもC末端側の18アミノ酸以内の領域が重要であることが示された。また、これらのuORFにおける翻訳アレストに終止コドンが必要かどうかを解析したところ、終止コドン依存的に翻訳アレストが起こるuORFと、終止コドン非依存的に翻訳アレストが起こるuORFが見出された。この結果から、遺伝子によってuORFペプチドによる翻訳アレストのメカニズムに違いがあることが示唆された。 uORFペプチドによって制御されるシロイヌナズナの遺伝子をさらに同定する目的で、アミノ酸配列が植物間で保存されているuORFの網羅的な探索を行った。その結果、アミノ酸配列が植物間で広く保存されているuORFを新たに13個同定した。その中に、5'非翻訳領域における選択的スプライシングによってuORFの存在や配列が変化する遺伝子が見出され、これらの遺伝子ではuORFによる翻訳制御と選択的スプライシングの連携によって遺伝子発現が制御される可能性が考えられた。
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