研究概要 |
出芽酵母において、RNA結合タンパク質Khd1pはASH1 mRNAの局在とその局所的翻訳制御に関与する。本年度は、RNA結合タンパク質Khd1pによるMTL1 mRNA安定性制御機構、およびKhd1pによる制御の生理的意義に着目して解析をすすめ、以下の結果を得た。 (1)出芽酵母RNA結合タンパク質Khd1pによるMTL1 mRNA安定性制御に関わるシス領域の限定とMTL1 mRNA安定性制御に関わるトランス因子の同定を行った。その結果、MTL1(532-1032)領域は、khd1変異株においてmRNAを不安定化させるのに必要かつ十分な配列であること、khd1変異株におけるMTL1 mRNAの不安定化には、5'→3'方向のmRNA分解酵素Xmlpとキャップ構造除去酵素コファクターDcplpが関与することを明らかにした(Mauchi et al., 2010)。 (2)khdl変異とccr4変異はsynthetic growth defect(合成増殖遅延)を示す。khd1変異株は野生型株とかわらない増殖を示すが、khd1 ccr4二重変異株は著しくその増殖が低下した。khd1 ccr4二重変異株では細胞壁合成が異常になっていた。CCR4遺伝子はCcr-Not転写複合体のサブユニットで、ポリA分解酵素の触媒サブユニットをコードする。以上の結果から、Khd1がCcr4とオーバーラップした機能をもち、その機能は細胞壁合成の維持である可能性が示唆された。
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