研究概要 |
高等真核生物での選択的スプライシングによる遺伝子発現制御を解析するため、我々は、選択的スプライシングに関わる因子SRタンパク質群の1つであるSRp75がClkにより特異的にリン酸化を受け、選択的スプライシングを調節することを明らかにした。そしてSRp75の内在性標的遺伝子を同定するため、その特異的結合配列をSELEX法により同定し、その結合配列に類似した配列を、Pmes-2の第4エクソン内に見出すことができた。Pmes-2は脳で特異的に発現しており、フィロポディア形成を促進する。Pmes-2はアクチンに結合するドメイン(ED)を持っており、そのリン酸化によってアクチンから解離する。Pmes-2遺伝子からは選択的スプライシングによってED型とΔED型が産生されるが、ΔED型はフィロポディア形成を常に促進する。このΔED型の発現はシナプスが成熟する臨界期前に限られ、発生が進むにつれてED型が増えていく。これらのことから、神経細胞はPmes-2遺伝子の選択的スプライシングを通して、入力特異的シナプス可塑性を獲得している可能性が考えられた。 我々は、神経細胞が極性と多様性を獲得・維持する機構を明らかにするため、Pmes-2の遺伝子の選択的スプライシング機構の解析を、レポーターを用いて行った。レポーターはPmes-2遺伝子の第2エクソンから第5エクソンまでの領域を含んでおり、第4エクソンのinclusion/exclusionによってそれぞれDsRed/GFPが発現するようになり、選択的スプライシングの結果が細胞内で可視化できる。解析の結果、SRp75の結合配列が第4エクソン内にあること、SRp75の共発現がinclusionを促進することを見出した。また、exclusionに関わる因子として、hnRNP A1, SRp30cを同定した。
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