研究概要 |
生物時計による遺伝子発現の制御として転写制御がよく知られているが、転写後の制御も存在する。申請者らは単細胞性の真核藻類であるクラミドモナスにおいて、様々な遺伝子のレポーター株を作製する過程で、生物発光レポーターの概日リズムに明らかに転写後制御が表れていることを発見した(未発表データ)。本研究では申請者らが確立した極めて効率的な順遺伝学的手法(Matsuo et al.Genes Dev, 2008)を用いることで、「転写後リズム制御」に関わる遺伝子群を網羅的に同定し、その機構の全容の解明を目指す。具体的には1)転写後リズム制御に関わるシス配列の同定、2)転写後リズム制御の解除された変異体のスクリーニングと原因遺伝子の網羅的同定、3)転写後リズム制御因子の細胞内局在解析、4)複合体のサブユニットおよび結合RNAの同定、5)時計遺伝子と転写後リズム制御因子の遺伝学的な相関の解析を行う。これらの解析により、RNAプログラムの一端である「時間的な制御機構」に関する新たな知見を提供できると期待される。 大規模1次スクリーニングにより、期待される表現型の変異体を分離することに成功した。しかし、その表現型が転写後リズム制御の解除によるものか、生物時計自体の異常によるものかを区別するために2次スクリーニングを行った結果、いずれも生物時計の異常によるものであることが明らかになった。転写後リズム制御の変異体を効率的に分離するには、2色レポーター系の応用により、1次スクリーニングで転写後リズム制御の変異体と生物時計の変異体を区別する必要がある。 一方、葉緑体の転写後リズム制御に関する知見を得るため、核コードの葉緑体転写後制御因子群の発現量を調べた結果、これらの因子は生物時計による発現制御を強く受けていることを見いだした。これは、葉緑体におけるRNAプログラムの時間的な制御機構の一端を明らかにする新しい知見である。
|