公募研究
後期発生の形態形成におけるmRNA翻訳制御の役割に関しては未だ知見が少ない。私達は線虫C.elegans表皮細胞研究の過程で、翻訳抑制に関わる遺伝子gcn-1の変異によってTrio/unc-73変異体幼虫の表皮細胞の形態異常表現型が抑圧されることを見出した。そこで本研究では、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)であるTrioがmRNA翻訳制御を介して細胞形態を調節するという新規なモデルを検証することを通じて、表皮細胞でのmRNA翻訳制御機構を解析し、その器官形態形成における役割について検討することを目指している。本年度は雄尾部表皮細胞特異的プロモーター下流でFLAG標識したeIF2αを発現させて、抗FLAG抗体による免疫沈降実験を行い、抗リン酸化eIF2α抗体を用いて表皮細胞中でのeIF2αのリン酸化レベルを検討してきた。しかし、材料の収集に多大の時間・労力が必要であり、unc-73変異体においてeIF2αのリン酸化が上昇しているかどうかまだ結論が得られていない。また、GEX-2の雄尾部表皮細胞でのmRNA翻訳制御への関与についても検討した。GEX-2は細胞骨格の再編成に関与するRacの調節因子として知られているが、4E-BP活性を有して翻訳活性の調節にも関与することが、最近培養細胞を用いた実験により示された。そこでGEX-2RNAiを行ったところ、野生型の背景ではunc-73変異と類似した表現型を示した。この結果は、GEX-2によるRacを介した細胞骨格調節機能の阻害効果によるものだとも解釈できるので、GEX-2の4E-BP活性のみを阻害する実験系の開発が必要であろう。
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Proceedings IEEE international symposium on Micro-NanoMechatronics and Human Science, 2009
ページ: 326-331