研究概要 |
線虫ではASD-1とSUP-12が協同してFGFRのpre-mRNAの特定の部位に結合しスプライシング反応を制御して、筋肉芽細胞特異的なFGFR分子を生成することが明らかにされている。本研究では、このふたつの因子による協同的なスプライシング反応の制御を構造生物学的な手法によって明らかすることを目指した。前年度には、SUP12単体およびSUP-12とRNAとの複合体構造をNMR法により決定することができている。今年度は、ASD-1およびSUP-12について、それぞれ、RNA結合ドメインを含んださまざまなコンストラクトを構築し、大腸菌を用いたin vivo合成あるいは無細胞タンパク質合成系を用いて大量発現を構築した。そして、構造解析に適した試料を得て、安定同位体標識体を作成してNMR法を用いた構造解析をSUP-12+ASD-1+RNA配列で解析を進めた。この構造解析の結果、ASD-1とSUP-12は協同的にUACGUGGUGUGCというRNA配列を認識していることが明らかになった。SUP-12単独では、後半のGUGUGC配列を単独で認識する場合一番目のGを特異的に認識し、二番目のU残基が、flip-outして直接には、SUP-12のRNA結合ドメインによって認識されていない。しかし、三者複合体では、この一番目のGに対応する塩基が、ASD-1とSUP-12にはさまれる形で認識され、飛び出していた2番目のU塩基が、SUP-12に続くG塩基とスタッキングするかたちで認識されるようになる。このように、ASD-1, SUP-12の系では、二つのRNA結合ドメインが協同的に働くことによってあらたな塩基認識部位を形作ことが明らかになった。
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