昨年度に引き続き、キクわい化ウイロイド(CSVd)のトラフィッキングに関わる部位特定実験を、6個のドメインに分類して行った。分類ごとに宿主植物のキクの葉に接種して、感染した葉(接種した葉よりも上位にある葉を選別)よりRNAを抽出してRT-PCRを行ない、PCR産物をクローニングして塩基配列を決定した。今までの実験で、接種時のCSVdウイロイドの濃度、および接種後からRNA抽出までの期間の長さが重要である事が明らかになっている。接種して4ヶ月後に感染した葉から抽出したRNAでは、有意な変異は認められていない。4ヶ月後程度の感染期間では充分ではないと考えられ、現在、6ヶ月あるいはそれ以上に期間を延長して実験を行っている。一方、平行して新たな実験に取り組んだ。すなわち、ウイロイドRNAおよびsmall RNA(ウイロイド由来と宿主由来の両者からなる)の細胞間トラフィッキングを解析する実験である。研究材料としては、1.未感染トマト(コントロール)、2.CSVd感染トマト、3.PSTVd(ジャガイモやせいも病ウイロイド)感染トマトを用いている。CSVd感染トマトは病徴を現わさないが、PSTVd感染トマトには病徴が出現する。トマトの葉にウイロイドを接種して、2ヶ月後に感染した葉よりRNAを抽出し、small RNAについて次世代シークエンサー(Roche/454)を用いて塩基配列を決定した。配列データを解析した結果、CSVd由来のsmall RNAはPSTVd由来のものに比べ顕著に少なく、RNAi-like機構によりprocessingされたものと考えられ、CSVd感染トマトが病徴を現わさないことと関連して興味深いデータが得られた。
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