タンパク質の細胞内局在の攪乱は、細胞恒常性の攪乱(=病態)を誘起する。申請者は、スライドグラス型の「生細胞アレイチップ作成・アッセイ自動化装置」と「チップ自動可視化装置」を構築し、タンパク質の細胞内局在の攪乱(=病態)を誘起する「キナーゼ(群)」を、ヒトキナーゼsiRNAライブラリーから網羅的に可視化スクリーニングする「キナーゼネットワーク可視化解析システム」を構築している。本解析システムを用い、リソソーム酵素の輸送に関わるカチオン非依存性マンノース6リン酸受容体の細胞内局在を攪乱(=病態)するキナーゼ群を、ヒトキナーゼsiRNAライブラリーから網羅的に可視化スクリーニングした。そのうちの一つGSK3βの活性低下やその基質タンパク質である微小管結合タンパク質CLASP2の脱リン酸化が、ポストゴルジ輸送を撹乱し、アルツハイマー病の原因因子であるアミロイドβペプチド(Aβ)の産生を亢進させることを明らかにした。今年度は、そのポストゴルジ輸送攪乱の原因として、GSK3βの活性低下により脱リン酸化したCLASP2がゴルジ体から解離することで、(i)ゴルジ体の断片化、(ii)CLASP2による微小管(+)端動態の撹乱、(iii)ゴルジ体由来微小管中心の形成の撹乱、が同時に生起することで、Aβのプロセッシング酵素であるBACE1の細胞内輸送が撹乱され、エンドソーム内で基質であるAβ前駆ペプチド(APP)とBACE1が共局在化してAPP→Aβへのプロセッシングが活性化されるというモデルを提唱できた。
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