研究概要 |
細胞膜タンパク質は、ユビキチン化依存的に細胞表面からエンドサイトーシスされ、リソソームに輸送されて分解される。本研究では、このユビキチン化依存的エンドサイトーシスにおける機能未知のユビキチン結合タンパク質ファミリーANKRD 13A, 13B, 13Dの役割を解析しており、前年度までにANKRD13が上皮細胞増殖因子EGFの刺激依存的にユビキチン化されたEGF受容体と結合し、その過剰発現によりEGF受容体の細胞膜からのインターナリゼーションが阻害されることを見出している。本年度は、引き続きEGF受容体のエンドサイトーシスにおれるANKRD13の機能解析を進め、以下の結果を得た。 1.ANKRD13自身がユビキチン化されること、それにはユビキチン結合モチーフUIMが必要であること、そしてユビキチン化によりANKRD13とユビキテン化されたEGF受容体の結合が抑制されることを見出した。したがって、ANKRD13がユビキチン化による負の活性制御を受けることが示唆された。 2.ANKRD13A,13B,13Dそれぞれのノックダウン・ベクターを作製し、HeLa細胞においてトリプル・ノックダウンを行った。しかし、ANKRD13A,13B,13Dがすべて効率よくノックダウンされているかどうかを判断できておらず、この実験から結論を導くことはできなかった。 3.ANKRD13Aと13Dをれぞれのノックアウトマウス(どちらも外見上は正常)を交配し、ANKRD13A、13Dダブル・ノックアウトマウスを作製した。しかしながら、外見上の異常は見られなかった。そこで、胚から13A,13Dダブル・ノックアウト細胞株を作製し、この細胞におけるEGF受容体のエンドサイトーシスを解析した。その結果、ダブル・ノックアウト細胞では野生型細胞に比べ、EGF刺激後のEGF受容体の細胞表面からのインターナリゼーションが促進されていることが明らかとなった。この結果は、前年度のANKRD13の過剰発現がEGF受容体のインターナリゼーションを阻害するという結果と合わせ、ANKRD13がEGF受容体のエンドサイトーシスを負に制御する因子であることを示唆している。
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