本研究では、共焦点レーザー顕微鏡による撮影画像に対して、輸送関連オルガネラを過不足無く抽出する手法を実現する。その実現に向け、初年度は細胞生物学者の観点からの現状問題を十分に把握する必要があった。そこで、画像処理による生体画像の適用例と、画像工学の観点から見た細胞画像理解の自動化に関する検討課題を生物学者に提示し、実際に議論することで問題点の洗い出しを行った。その結果、特定の対象オルガネラの追跡やカウントが主たる課題であることと、完全自動化ではなく、多くの時系列画像データから重要画像を抽出するなどの抽出補助でも十分な需要があることとがわかった。また、実際の生物画像データ提供の協力も得られた。 実際には予備実験段階であり、外部にはまだ未公開なため詳細までは説明できないが、下記2点の検討を行った。 まずは、ある一定の画像シーケンスから、輝点があるような画像のみを抽出することを試みた。これは、各時刻における画像を分割し、局所的な輝度変化の統計量が大きくなった画像を、重要な変化があったフレームとして抽出するという手法である。これにより、大量にある画像列データから、解析が必要な画像のみ抽出することで、手動(目視)による解析の負担が減ることが期待できる。 また、オルガネラの追跡に関しても、人工データを用いて予備実験を行った。細胞画像はS/N比が悪いため輝度特徴のみで追跡することは容易ではなく、2値画像のみで追跡するアルゴリズムを提案、まずは同時存在物体数が少ない条件での実験を行い、良好な結果が得られた。 これらの研究成果は、次年度以降に実際の生物画像データを用いて実験し、外部報告する予定である。
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