研究概要 |
COPI被覆小胞は、ゴルジ体から小胞体へのタンパク質や脂質の逆行輸送を仲介する。COPI小胞のコートタンパク質であるCOPI複合体のサブユニットや、COPIを小胞膜へとリクルートするために必要な低分子量GTPaseのARF、およびそのGEFであるGBF1、あるいはGAPであるArfGAP1-ArfGAP3をノックダウンしたり、Arf-GEFの阻害楽であるブレフェルジンAで細胞を処理したりすると、脂肪滴のサイズが大きくなることを見いだした。このような条件下では,細胞内のトリグリセリドの含量が増えていることから、ARF-COPI系を介するゴルジ体から小胞体への逆行輸送の遮断がトリグリセリドの合成の亢進、あるいは分解の低下を引き起こすと考えられた。 そこでまず、トリグリセリド合成が亢進する可能性について検討した。一つの可能性として、ARF-COPI系を遮断することによって、トリグリセリド合成に関与するタンパク質の脂肪滴表面へのリクルートが変化する可能性がある。しかし、PATタンパク質の一種であるADRPやTIP47などのタンパク質に顕著な変化は見られなかった。 別の可能性としては、ARF-COPI系を遮断することによって、脂質合成全般が亢進する可能性がある。そのマスタースイッチとなるのが転写因子SREBPである。平成21年度はこれまでに、COPIやArf-GEF、ArfGAPをsiRNA法でノックダウンすると、SREBPの不活性型から活性型への変換が亢進することを見いだしている。今後、他の条件でもSREBPの活性化が亢進するのかや、SREBPの下流で転写調節を受ける遺伝子の発現の変化などについて検討する予定である。
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