COPI被覆小胞は、ゴルジ体から小胞体へのタンパク質や脂質の逆行輸送を仲介する。前年度までに、COPI小胞のコートタンパク質であるCOPI複合体のサブユニットや、COPIを小胞膜へとリクルートするために必要な低分子量GTPaseのArf、およひそのGEFであるGBF1、あるいはGAPであるArfGAP1-ArfGAP3をノックダウンしたり、Arf-GEFの阻害薬であるブレフェルジンA(BFA)やゴルジサイドA(GCA)で細胞を処理したりすると、脂肪滴のサイズが大きくなることを見いだした。このような条件下では、細胞内のトリグリセリド含量が増大していることから、ARF-COPI系を介するゴルジ体から小胞体への逆行輸送の遮断がトリグリセリドの合成の冗進、あるいは分解の低下を引き起こすと考えられた。 そこで、トリグリセリドの合成が促進される可能性、および分解が抑制される可能性について検討した。その結果、ARF-COPI系を介する逆行輸送の遮断時には、トリグリセリドの合成が促進されると考えられた。 脂質合成全般の冗進に関与するマスタースイッチとして転与因子SREBPがある。SREBPは通常は不活性型として小胞体に存存するが、コレステロール欠乏時などにはゴルジ体に移行して、S1PとS2Pというプロテーアーゼによる限定切断を受けて活性化する。細胞をBFAやGCAで処理すると、S1PやS2Pがゴルジ体から小胞体へと移行してSREBPを活性化することを見いだした。 一方、6種類存在するArfのうち、どのアイソフォームはこの脂肪滴形成に関与するのかについてRNA干渉法によって検討した。その結果、クラスIIに属するArf4とArf5が脂肪滴形成にとって重要であることを見いだした。
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