初期エンドゾームの融合は、細胞外から取り込んだ積み荷を細胞内の目的地へ運ぶための出発点となる現象である。一方、細胞分裂期においてはエンドゾームの膜融合が阻害されることが知られている。この現象は、1989年にエンドゾーム膜融合のin vitro再構築系を用いて示されたが、その分子メカニズムはほとんど明らかとなっていない。 本年度我々は、細胞分裂の進行に必須のキナーゼであるpolo-like kinase 1 (Plk1)が、分裂期の初期エンドゾームの融合を阻害する働きを持つことを見出した。Plk1を薬剤やsiRNAによるノックダウンで阻害すると、分裂期において後期エンドゾームやリソソームが正常であるのに対し、初期エンドゾームが顕著に肥大化した。この現象はS期やG2期の細胞では認められないため、分裂期特異的な分子機構であると考えられる。また、siRNA耐性のPlk1により正常に戻ることからその特異性も確認された。さらに、初期エンドゾームの融合に必須であるRab5が、分裂期には活性化状態であるGTP結合型で存在すること、またこの現象はPlk1に依存することを見出した。Plk1は分裂期において初期エンドゾームの融合を阻害する一方、GTP-Rab5の蓄積に寄与することから、Rab5の分裂期特異的な制御機構の存在が示唆された。
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