後期エンドソームに存在するp18はがん原遺伝子産物Srcチロシンキナーゼの基質であり、またMAPKやmTORなどのキナーゼを後期エンドソームにリクルートするアンカータンパク質として働く。後期エンドソームにおけるこれらのキナーゼシグナルは、メンブレントラフィックや増殖など、細胞の機能と増殖の調節において重要な役割を果たすことが徐々に明らかとなってきた。そこで本研究では主にメンブレントラフィック、特にリソソーム分解系に焦点を絞ってp18の生物学的意義を追及した。リソソーム分解系での機能評価の指標として、オートファジーマーカーであるLC3の細胞内局在と分解について、細胞生物学的、および生化学的な解析を行ったところ、p18を遺伝子的に欠失した細胞ではオートファジー誘導後のLC3分解が低下し、後期エンドソームにLC3が蓄積する傾向が観察された。 正常細胞にMAPK経路の阻害剤処理を行うと同様のLC3の分解抑制が観察されるのに対し、SrcやmTORの阻害剤ではそのような効果は観察されなかった。また後期エンドソームへ局在化する人工的なMEK1融合遺伝子を発現させて、後期エンドソームのMAPK経路のみを復活させたp18欠損細胞を作製したところ、この細胞ではLC3分解が正常化する結果も観察された。これらの結果から、後期エンドソームに存在するMAPKシグナルがメンブレントラフィックに関わる確証を得た。後期エンドソームMAPKの具体的な基質タンパク質については、同定途上となった。
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