本研究課題は、大局的最適化に基づく、(1)「非線形画像照合(マッチング)」ならびに(2)「動画像中の物体のオフライン追跡(トラッキング)」を基本的な武器として、そこに細胞観察画像に独特な性質を組み込むことで、メラノソーム追跡をはじめとする各種細胞内ロジスティクス問題の自動かつ高精度な解析法の実現を目的としている。 平成21年度は、(1)および(2)の課題それぞれについて、アルゴリズム的改良ならびに特性把握に関する理論的および実験的考察を行った。具体的には、いずれの課題についても大局的最適化の道具として考えている「解析的DPマッチング」について、(1)それを非線形画像照合に応用した際、どのような画像対については正しく整合でき、またどのような画像対についてどのような理由で不整合を起こすかの入念な調査を行った。また(2)それをオフライントラッキングに応用した際、目的関数の高度化(より詳細には多峰性目的関数の導入)することを効果について、理論的検討および検証実験を行った。 これらの検討と並行して、実際の細胞内膜小胞輸送動画像サンプルを班員に提供頂き、それをターゲットとした小胞追跡の検討を開始した。これら動画像サンプルに対し、大局的・局所多値化など様々な前処理を適用し、なるべく追跡を容易にするための工夫を行った。加えて、各小胞が起こす様々な変形-大きさの変化、移動速度の緩やかな変化および急速な変化(方向逆転)、オクルージョン(隠れ)、消失-について把握した。
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