アルツハイマー病の病理に中心的な役割を果たすβアミロイド(Aβ)は、その前駆体蛋白質APPからβ・γの2段階の切断により産生されるが、神経細胞においてはAPPが軸索輸送・エンドサイトーシスされた後に切断を受けると考えられている。我々は、新規に開発した膜ミクロドメイン解析法を用いて神経細胞中にβ切断抑制性ミクロドメインを見出した。これはゴルジ体で形成されるAPPなど輸送関連膜蛋白質の複合体を核としたミクロドメインと考えられ、軸索輸送中または輸送後に起こる複合体解離はAPPのβセクレターゼ局在ミクロドメインへの移行を誘導しβ切断を調節する可能性がある。本研究では、軸索輸送後の細胞膜からエンドソームにおけるAPP-βセクレターゼ相互作用調節に対するミクロドメインの関与を明らかにし、Aβ産生-輸送連関機構を明らかにすることを目的としている。 ミクロドメイン中に見出したエンドサイトーシス関連分子の機能解析を進めるとともに、β切断調節への関与を明らかにするために必要なアッセイ系の確立を行った。具体的には、1)細胞膜上及びエンドソーム中のAPP-BACE1相互作用を解析するために蛍光色素ポストラベル法を細胞表面のAPPに適用し、標識及びタイムラプスイメージングを行った。 2)細胞膜に輸送された後のAPPのβ切断を解析するために、細胞表面蛋白質のビオチン化後に培養液中に遊離されたビオチン化APP細胞外ドメインを回収しβ切断断片を定量するアッセイ系を確立した。これらを利用してミクロドメイン中に見出したエンドサイトーシス関連分子のβ切断調節への関与を解析する。 また、我々が開発した膜ミクロドメイン解析法をシナプトソームやその中のエンドソームに適用し、ミクロドメイン解析を試みる予定である。
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