血管新生は癌の悪性度進行の律速段階の一つと考えられている。様々な癌種における血管新生の分子機序の多様性と共通性を明らかにすることが病態の理解と効果的な治療に繋がるものと思われる。腫瘍血管は、脆弱で透過性が亢進し、癌転移のルートとなると考えられている。血管内皮細胞の透過性はVEGF(vascular endothelial growth factor)によって誘導されるVE-cadherinの細胞内輸送の制御が重要な役割を担っている。しかしながら、進行癌における血管透過性の亢進とVE-cadherinの細胞内動態との関連には不明な点が多い。 本研究では、これまでの研究成果を発展させるために、透過性の亢進におけるVE-cadherinの細胞内ロジスティクスについてArf6を中心とした分子装置の関与及び作用機序について検討を行った。 1)血管透過性におけるGEP100-Arf6-AMAP1シグナルの分子機序 血管内皮細胞の透過性に関して、蛍光標識デキストランを用い、VEGF刺激により血管内皮細胞(HUVEC)間を通過した蛍光標識デキストランの蛍光を測定した結果、GEP100、Arf6、AMAP1のsiRNA法による発現抑制において、透過性がVEGF刺激前からコントロールに比べ、亢進していることがわかった。また、VE-cadherinの細胞動態を抗体を用い解析した結果、GEP100、Arf6、AMAP1のsiRNA法による発現抑制において、VEGF刺激前からコントロールに比べ、VE-cadherinが細胞内に取り込まれていることがわかった。これらのことから、GEP100、Arf6、AMAP1はVE-cadherinの細胞輸送制御に関与していることがわかった。 2)GEP100-Arf6-AMAP1シグナルとVE-cadherinとの相互作用に関与する分子の同定 VE-cadherinの細胞輸送とGEP100-Arf6-AMAP1シグナルとの関連性をEMT関連分子E-cadherinの細胞動態と類似性があるか検討を行っている。
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