MHC class IIはMARCH-Iによるユビキチン化によってその細胞表面における発現が制御されている。MHC class IIのbeta鎖の225番目のリジン残基がユビキチン化部位である。本年度は、MARCH-IによるMHC class IIのユビキチン化が免疫システムにおいてどのような意義を持っているのかについて検討を加えた。最初に、MHC class IIのユビキチン化の状態が、免疫起動細胞である樹状細胞においてどのように制御されているのかついて検討した。樹状細胞は感染の刺激を受けると活性化し免疫を誘導する。この際に、病原体由来のペプチドを提示したMHC class IIが細胞表面に高発現することが明らかとなっている。この状態を模倣する為に、LPSにて樹状細胞を刺激した。その結果、MHC class IIのユビキチン化は顕著に抑制された。さらに、MARCH-Iの発現も同時に顕著に低下していた。これらの事から、感染刺激によってMARCH-Iの発現が減少し、MHC class IIのユビキチン化が抑制され、病原体に対する免疫が効率よく誘導されると考えられる。従って、この仮説を証明する為に、MARCH-Iのconditional knock-outマウスを作製した。このマウスはタモキシフェンの投与によってMARCH-Iが欠損出来るマウスであり、感染刺激によってMRRCH-Iが欠損する状況を模倣する事が出来る。現在までに、このマウスから作成した樹状細胞を用いて、in vitroにてMARCH-Iを欠損出来る事、さらにMHC class IIのユビキチン化が顕著に減弱する事を確認している。現在、この樹状細胞を作成し、我々の仮説の証明を行なっている所である。
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