真核生物のゲノム機能調節に重要なエピジェネティック制御において、細胞核は重要な役割を果たしている。細胞核は、高度に組織化・区画化された構造体であり、この構造に基づくクロマチンの核内収納がその分子基盤となっている。申請者はこれまでに、アクチンに進化的・構造的に関連性を有するアクチン関連タンパク質が、核内部の構造構築に重要であることを見致している。本研究では、どのようにアクチン関連タンパク質が細胞核の内部構造構築に寄与しているかについて、その分子機構を明らかにすることを目的とした。連帯研究者である、近畿大学の三谷匡、および海外研究協力者であるFriedrich Miescher Institute(スイス)のDr.Susan Gasserおよびカレル大(チェコ)のDr.Pavel Hozakと共に、研究を実施した。ニワトリDT40細胞を用いてアクチン関連タンパク質Arp6を破壊し、染色体テリトリーの核内配置を解析したところ、放射状配置に異常が観察された。ヒストンバリアントH2A.ZはArp6によりクロマチンに導入されるが、H2A.Z破壊細胞では、Arp6破壊細胞に比べて、放射状配置の異常の程度は低かったことから、Arp6がH2A.Z非依存性および依存性の二つの経路で、細胞核内部のクロマチン空間配置に重要な役割を果たすことを明らかにすることができた。この分子機構を解明する目的でプロテオミクス解析を行い、協調的に機能するタンパク質の複数の候補を得ることができた。今後、このタンパク質の解析も同時に行う予定である。
|