研究概要 |
当該年度は,線虫の頭部拡大画像をロバストにトラッキングするアルゴリズムを開発した.現段階では,並進移動と回転の3つのパラメータを推定する非線形最小化問題を解くことにより,線虫の体のテクスチャをトラッキングすることに成功している.線虫が体をくねらせて変形する場合や,ゴミなどで体の一部が隠れる場合にも,最小二乗推定により初期画像に最も合致する部分をトラッキングすることができる.これにより線虫の神経細胞が集中して存在する頭部を高倍率で長時間追跡することが可能となり,神経細胞の活動記録に大いに役立てることが期待される.画像取得に用いるカメラとして高速CMOSカメラを導入した.画像サイズ400×400ピクセル,テンプレートサイズ50×50ピクセルで500fps程度の画像処理が実現できている.画像処理の高速度化はトラッキングシステムにおける顕微鏡ステージの制御のために非常に重要な要素である.高解像度の画像を用いながら,高いサンプリングレートで顕微鏡ステージの制御を行うことにより,線虫行動解析に必要十分な空間・時間分解能向上が実現できた. 蛍光画像取得に用いるEM-CCDカメラを導入した.CCDはCMOSとは違い,ROI制御が自由に行えないため,複数の画素の輝度を足し合わせて1つの画素とみなすビニング処理や部分読み出しを行うことで150fps程度の高フレームレートでの蛍光画像取得が可能となった.線虫の蛍光画像の取得のみならず,蛍光画像を手がかりとしたGFP発現部位のトラッキングにも成功している.線虫の蛍光画像でのトラッキングを,明視野像でのトラッキングの補助として用いることも検討中である.高フレームレートでの蛍光画像取得は,短時間で起こる線虫の神経活動の変化を見逃さずに観察することで、今後の階層的かる多様な反応連鎖の解明に大きく貢献すると期待される.
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