公募研究
多くの動物が睡眠することが知られているが、その分子メカニズムはまだ良くわかっていない。哺乳類と鳥類については脳波(EEG)が測定されており、睡眠状態ではEEGが徐波化することが知られている。また、レム睡眠、ノンレム睡眠の区別がある。鳥類や鯨類などでは左右の脳半球を交互に眠らせる動物も存在する。その他の動物でも、例えばショウジョウバエ、ゼブラフィッシュでは行動観察から活動が低下し、刺激に対する覚醒閾値が上昇することが知られており、これは睡眠状態と考えられている。これまで、ゼブラフィッシュでは脳波測定の報告はなく、行動観察より睡眠・覚醒の評価が行われてきた。そこで本研究ではまず光学的手法を用いた脳波測定(optical encephalogram OEG)を行いゼブラフィッシュにおける客観的・定量的睡眠・覚醒の評価法を確立する。そして、睡眠覚醒と関係があるとされるHypocretin/Orexin(Hcrt)についてmutantを解析し検討する。それによって、動物の睡眠と覚醒の分子機構を明らかにすることを目的としている。本研究は睡眠障害の治療、時差ぼけの効果的対処法などに発展する可能性がある。本年度は、客観的・定量的な睡眠・覚醒の評価法を確立することを行った。そのため、GFPを用いたカルシウムセンサー(改良型G-CaMP)を神経細胞のシナプス前部に限局して発現するcDNAを作成した。当初VAMPを用いてG-CaMPをシナプス前部にターゲティングさせる予定であったが、ごく最近synaptophysinをもちいた報告がなされたため、synaptophysinを用いたcDNAも合わせて作成した。本研究の採択後、モデル生物として優れている線虫が当研究室で利用可能となったため、作成したcDNAを線虫でテストし、結果を検討した。
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PLoS One 5
ページ: e8897
生体の科学 61
ページ: 86-92