公募研究
ミツバチは高い視覚情報処理能力老もち、働き蜂は餌場の位置の情報を「8字ダンス」により仲間に伝達する。しかし、ミツバチの視覚情報処理の分子・神経基盤には不明な点が多い。申請者等はミツバチ脳の「分子的解剖」を行う過程で、高次中枢(キノコ体)や視覚中枢(視葉)で神経細胞のサブタイプ選択的に発現する遺伝子を発見した。本研究では、こうしたミツバチ脳の「モジュール構造」が視覚情報処理において果たす機能と、その成因を解析するため、(1)視葉の様々な神経細胞のサブタイプ選択的な遺伝子の同定、(2)当該遺伝子を発現する神経回路の可視化、(3)脳のモジュール構造の成因の分子レベルでの解析、を行う計画である。今年度は(1)に関して、微小管結合タンパク質をコードし、「単極細胞」選択的に発現する2種類の遺伝子Tauとfutschに加え、視葉の腹側ゾーンに前後軸に沿って発現するMESK2を発見し、論文発表した(PLoS ONE)。MESK2発現細胞は、地上の視覚対象の認識に働く可能性がある。また、働き蜂脳でオクトパミン陽性細胞選択的に発現し、働き蜂の分業依存に発現変動する非翻訳性RNA,Nb-1に関して論文発表し(Insect Mol. Biol.)、さらに、Nb-1は変態期には増殖神経芽細胞選択的に発現すること、成虫の網膜では雄特異的に発現し、雌蜂では発現しないことを見出し、新規な多機能性RNA分子である可能性を提唱した。この他に、ミツバチ脳から見出された転写因子の線虫ホモログMBR-1の機能解析(Nat. Neurosci.)、初期応答遺伝子kakuseiを用いた採餌蜂脳における活動領域の解析(PLoS ONE)、ミツバチ脳で領野選択的に発現する新規なmiRNA(Apidologie)について論文発表した。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
PLoS ONE 5(1)
ページ: e8833
Apidologie (in press)
PLoS ONE 5(2)
ページ: e9213
Nat.Neurosci 12
ページ: 981-987
Insect Mol.Biol. 18
ページ: 715-726
http://kubo.biol.s.u-tokyo.ac.jp/