脳の特異的細胞で遺伝子発現を誘導するために従来から用いられてきたGAL4エンハンサートラップ系統に替わって異なる原理で発現を誘導するために、大腸菌由来の発現制御因子LexA :: VP16を用いたエンハンサートラップ系統を作成した。LexAによる発現誘導の強度はGAL4より若干弱いため、高解像度、高感度で発現パターンを記録する方法を種々検討し、最適条件を検討した。 こうして得られた系統を用いて行動制御神経が集積する領域付近に投射を持つ神経をラベルする系統を探索した結果、行動制御神経ではないが味覚感覚神経の大部分をラベルする系統を見いだした(味覚一次中枢は行動制御神経の領域のすぐ下部に位置する)。この系統は味覚中枢の構造解明に非常に有用であることが分かったため、各種の味覚感覚神経とラベルするGAL4エンハンサートラップ系統と組み合わせた味覚中枢の詳細な投射マップ解明に利用することにした。 得られた系統の神経発現パターンを広く一般に公開するには論文でなくデータベースによる発表が必要になる。そこで画像データベースの設計構築を開始し、ユーザーがインタラクティブに画像を操作して投射パターンの解析を行えるような神経可視化ツールの開発を行った。 並行して、これまで解析してきたショウジョウバエやカイコガの歩行制御神経が集中するLAL領域の神経回路の構造から予測される制御様式を微分方程式化し、あわせてその式をプログラムして自動制御で動くロボットの作成を始めた。
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