公募研究
ヒトを含む動物行動の多くは、生息空間、配偶者、食物などに関する"嗜好"に左右される。そこで本研究では、クロキンバエをモデルとして食嗜好性に焦点を当て、嗜好が正・負に分かれる時、また嗜好性が経験を経て変化する時の、摂食行動の切り替え、神経システムの機能性の転換と機能分子の変動を解明する目的で実験を実施した。食事時に共存すると食欲が上がり、経験によって増強された食欲レベルが維持される匂い物質として1-octen-3-olを特定した。一方、共存すると食欲が下がり、経験によって減退した食欲レベルが維持される匂い物質としてD-limoneneを特定した。D-limoneneの効果は、主嗅覚器官(触角)から入力したときに発揮されることがわかった。以前に、われわれは、食事経験による食嗜好変動を脳内アミン(チラミン)注射により操作することができると報告したが、この度、チラミン代謝に関与する酵素と、チラミン受容体遺伝子を単離し、その時の遺伝子発現の変化を示すことができた。また、脳神経系の初期発生段階で細胞分裂阻害剤を処方することにより、脳における記憶中枢であるキノコ体を欠いたハエを安定的に作成することができるようになった。このハエは、食事時に1-octen-3-ol臭が共存すると食欲の増加を、D-limonene臭が共存すると食欲の減退を示すが、それぞれの匂いを伴う食事の経験の効果は、まったく見られないことを確認した。補足的に、キイロショウジョウバエを用いて、食欲変動時に脳における発現が変化する遺伝子を網羅的に調べた。
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Gene 446
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日本味と匂学会誌 16
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