環境や周囲の状況に応じた行動は感覚入力によって惹起される複数の基本的運動プログラムの統合により実現される。しかしこの神経機構については殆ど知られていない。今回眼球運動と体幹の協調運動をモデルとして感覚運動統合過程の神経基盤を明らかにしたい。研究は2段階で計画した。第一段階では正常動物におけるこれらの感覚運動統合機構を詳細に調べる。第二段階では、各種疾病モデル動物や変異体について同様の神経機構を調べる。双方の神経機構の相同を明らかにすることによって、神経回路および分子機構レベルでの感覚運動統合の神経機序を明らかにすると同時に、臨床応用の可能性も探りたい。 今年度は第一段階のうちで、ゼブラフィッシュの摘出脳脊髄標本の作製方法と、その標本における神経活動のリアルタイム光計測法の確立を計画していた。成熟動物での摘出脳脊髄標本は、ヤツメウナギ成魚や、成熟カメで成功している。しかし酸素需要が高いと考えられるゼブラフィッシュ成魚では、当初の計画と異なり摘出脳脊髄標本の作製が難航した。そこで同じ小型魚類でゼブラフィッシュ同様、当初の研究目的に適うメダカ(Oryzias latipes)にモデル動物を変更し、計画通り、摘出脳脊髄標本の作製方法を確立した。またこの標本での視蓋や脊髄の神経活動を光計測する方法についてもほぼ完成することができ、22年度以降の予定である、正常動物ならびに各種疾病モデル動物等の眼球運動ロコモーションの統合機構を明らかにしていくための準備が整ったと考えている。
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