研究概要 |
熱帯以外の地域に生息する多くの動物は、特定の季節にのみ繁殖活動を行う「季節繁殖」という戦略をとっている。なかでもウズラは脊椎動物の中で、特に洗練された季節適応能力を有しており、生殖線もごく短い繁殖期にのみ一過的に発達させる。このため非繁殖期の精巣は外見上、未分化な状態にまで退行する。このように急速かつ劇的な生殖腺の形態変化を伴う鳥類の季節繁殖は特徴ある配偶子生産様式を示す動物種の一例として、GSC/ニッチシステムを理解するための最適な系を提供する。本研究では生殖活動の季節変化に着目し、GSC/ニッチシステムの制御機構を解明することを目的としている。 鳥類の精子形成については分子レベルの研究はほとんど行われておらず、精子形成に関与する遺伝子についての知見も皆無といって良い。そこでまず、哺乳類において精子形成に関与することが知られているマーカー遺伝子(Ptzf, GFRal, c-Ret, E-cadherin, c-Kit, Stra8, Vasa)のウズラオルソログをクローニングし、open reading frameの塩基配列を決定した。さらに、活発に精子形成を行っている繁殖期の精巣において、上記の分子マーカーの局在をin situ hybridizationによって詳細に検討した。この解析によって、鳥類と哺乳類の精子形成の相違点が徐々に明らかになってきた。
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