研究概要 |
真核細胞は、一酸化窒素(NO)や過酸化水素(H_2O_2)等の活性窒素・活性酸素によるストレスを受けたときタンパク質合成が低下することが知られている。本研究では、この現象に関与する翻訳開始因子キナーゼ、ヘム調節キナーゼ(HRI)を対象として、その酵素活性調節の分子機構について研究を行う。具体的には、in vitro, in vivo両方におけるHRIとNOとの相互作用を検討するために、大腸菌で大量発現した組換えHRI、及び培養細胞(マウス赤白血病細胞、MEL)に対して、NOドナーとしてS-ニトロソグルタチオンを添加し、タンパク質のS-ニトロシル化を分光学的、ビオチンスイッチアッセイ等によって検出する。また同時に、eIF2αを基質としたキナーゼ活性測定を行うことで、酵素活性への影響を評価する。 In vitroにおいてHRIとS-ニトロソグルタチオン反応させ、S-ニトロシル化反応の有無を解析したところ、ヘムが結合したHRIについては、S-ニトロシル化がほとんど見られず、活性変化は観測されない。一方、ヘムを結合していないHRIは、5カ所のS-ニトロシル化が確認された。また、S-ニトロシル化によって、活性が有意に上昇することがわかった。次にS-ニトロソグルタチオンによって修飾されるCys残基を同定するために、CysをSerへと変えた変異体を作製し、活性を比較したところ、Cys105、Cys385がS-ニトロシシル化される可能性が示唆された。 In vivoにおけるHRIのS-ニトロシル化はビオチンスイッチアッセイ法によって行った。以上の結果を現在投稿論文にまとめている。
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