酸化ストレスにより特異的に誘導される遺伝子群を同定するために胎児線維芽細胞(MEFs)をin vitroでH 2O 2刺激し、ゲノムワイドなトランスクリプトーム解析を行い、酸化ストレス依存性に誘導される遺伝子群700個を同定した。次にこれらの遺伝子群のなかから、in vivoにおいても酸化ストレス依存性に誘導されるかどうかを検討するために、マウスを用いて劇症肝炎のモデルである抗Fas抗体投与による劇症肝炎を誘導し、注射後に肝臓の還元型グルタチオン(GSH)が有意に減少することが明らかとなった。このことは劇症肝炎に伴い強い酸化ストレスが誘導されていることを示している。そこで、in vitroの解析で同定した遺伝子の中で、抗Fas抗体投与によるin vivoの酸化ストレスモデルで発現が上昇するかを検討した結果、OIF(oxidative stress-inducible factor)と命名した遺伝子を同定することに成功した。Oif遺伝子はH 2O 2刺激によりmRNAレベルおよびタンパクレベルでもin vitroおよびin vivoにおいて酸化ストレス依存性に誘導されることが明らかとなった。また劇症肝炎モデルにおいては、OIFは肝細胞が主に分泌しており、Kupffer細胞はほとんど産生していないことが明らかとなった。さらにOif遺伝子の発現をin vivoでモニタリングする(つまり酸化ストレスをモニタリングする)ために、Oif遺伝子を含むBACクローンを用いてOif遺伝子の第2エクソンに蛍光色素遺伝子であるEGFP(enhanced green fluorescence protein)を挿入したトランスジェニックマウス用のベクターを構築した。今後Oifの詳細な遺伝子制御のメカニズムの解析および作製したベクターを用いてトランスジェニックマウスを作製する予定である。
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