藍色細菌の生物時計分子装置は時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCの3つの時計タンパク質から構成され、ATP存在下の試験管内で24時間周期で自律的に発振する。KaiCのリン酸化レベルやKaiCのATPase活性、Kai時計複合体の会合・解離で振動が認められる。しかし、Kaiタンパク質の会合・解離の詳細や時間発振の分子機構は今後の課題である。 これまで、KaiA-KaiB間では直接的な相互作用は検出されていなかった。我々は、システイン残基(Cys残基)を持たないKaiBの特定のアミノ酸残基に一アミノ酸残基置換変異を導入し、そのCys残基にスピンラベルを導入し、導入したスピンラベルをプローブに用いて、ESR法でESRスペクトルを測定した。その結果、KaiBはKaiAと化学量論的に相互作用することが明らかになった。想定される相互作用部位から、KaiAとKaiBが相互作用するにはKaiAとKaiBの構造が大きく変化する必要があることが分かった。 藍色細菌Synechocystisには生物時計機能を担う時計タンパク質KaiA、KaiB1、KaiC1の他に、ホモログタンパク質KaiB2、KaiB3、KaiC2、KaiC3が存在するが、これらの機能は良く分かっていない。特にKaiB2とKaic2は古細菌のホモログと系統関係が近いことが分かっていて、進化上古いホモログである。これらのホモログタンパク質の構造と機能を解明するために、タンパク質それぞれの大腸菌発現コンストラクトを作製し、大腸菌で大量発現させ、精製を試みた。その結果、KaiB1、KaiB2、KaiB3は高度に精製することができた。X線結晶構造解析のために結晶化スクリーニングを実施しているがまだ結晶は得られていない。また、時計機能のあるKaiB1と比較するために試験管内での生化学的解析を進めている。
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