DNA複製・修復・組み換えは、種の遺伝的連続性を保証する最も重要な機構である。現時点では、さまざまなタンパク質分子が実際にどのように相互作用しつつ、非常に複雑な反応を速やかに、そして絶妙な精度で触媒するのかについてのダイナミクスはわかっていない。ましてや、それらのタンパク質がエネルギー源であるATPをどのように結合・解離し、その加水分解エネルギーを化学力学変換して、DNAと相互作用し機能を発揮しているのかについての詳細はわかっていない。このATPの加水分解エネルギーの化学力学変換機構の理解のためには、直接ATPとタンパク質が相互作用している現場を可視化することが鍵となる。そこで本研究では、1分子蛍光イメージング観察系の改良を通して、DNA結合タンパク質のATPの結合・解離状態を高濃度ATP条件下で1分子可視化できる系を構築し、その化学力学変換機構に迫ることを目的とした。 平成21年度は、標識したときに基質ATPとしてはたらきのよい蛍光色素の探索、DNA結合タンパク質の蛍光標識、実験に必要なDNAの設計と作製、高濃度蛍光性ATP存在下でのATP結合・解離の1分子イメージングのための観察系として本研究にて提案した(i)ゼロモード導波路(ナノ開口アレイ)及び(ii)Qdotをドナーとして用いる1分子FRET光学系の作製と有用性の検討、基板表面へのタンパク質の非特異吸着を抑制する表面コーティングの開発を行った。
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