公募研究
われわれは最近、新しい機序により、GTPはATP-特異的サクシニルCoAシンテターゼ(SCS)との結合が制限されるという考えを提唱した。活性部位の入り口にある溶媒に露出している荷電残基と基質との静電双極子反応が生じ、それによりFTPの立体構造が、結合できないような構造に切り替わる。われわれはこの新しい機序に静電gatekeeperと名付け、gatekeeper残基が、基質を受け入れることのできる活性部位への接近をコントロールしていると考えた。このような機序があれば、酵素のヌクレオチド特異性を、ヌクレオチド結合部位を変えることなく人工的に作成することが可能となろう。特に、活性部位エントランスにある2個の正に荷電を、逆転させることで、ATP-特異的SCSの特異性を高めることができるであろうと提唱した。最近の実験結果によると、野生型と比較して、変異体(K60E, K128D)では、GTP親和性がはるかに高くなることが示された(K_mが>>1000μMから76.5μMに低下)。ATPに対する効果は、これよりも少なかった(K_mが68.5から195.3μMに上昇)。これらの結果は、(提唱している)gatekeeperの機序と合致するものである。ATPは、GTPに比較して双極子モーメントがはるかに弱いからである。さらに、活性部位を、判明しているGTP-特異的アイソフォームに変異させても(V127L, L241F)、GTP活性には何ら影響がなかった。つまり、gatekeeperが機能していて、GTPの結合を防いでいる。これらのことを総合すると、以上の結果は、結合部位の周囲にある溶媒層の静電特性を変化させることで、リガンド特異性を変えられることを、最初に実証したものである。この知見は、酵素の分子進化に重要な意味を持つものであり、また、構造に基づく薬物デザインにも意義深いものである。
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