サル下側頭葉皮質は、顔を含む物体認知に関わる腹側視覚経路の最終段階にあり、前部にあたるTE野と後部にありTEO野より下位に属するTEO野に分かれる。今回我々は、最近我々が開発した蛍光トレーサーコレラトキシン-Alexa555注入による生体内線維結合イメージングを用いて、TE野の顔に強く反応するスポットに投射する小領域をTEO野内に生体内で同定し、このスポットの顔を含む視覚刺激に対する反応性を調べた。また、このTEO野の投射スポットに抑制性神経伝達物質GABAアゴニスト・ムシモルを注入し、その投射部位であるTE野のスポットの視覚刺激反応性を調べた。TEO野の投射スポットの視覚反応性は、ランダムに選んだTEO野のスポットに比べて、トレーサー注入部位であるTE野のスポットの視覚反応性とより高い相関を示した。また、TEO野の投射スポットヘムシモルを注入することにより、TE野の視覚反応性が大きく変わることを観察した。この大きな変動は、トレーサー注入部位ではないTE野の記録では起こらず、また、TEO野内の任意の部位へのムシモル注入では、起こらないことを確認した。上記の結果は、TEO野からTE野への投射が強い影響力を持っている事を示唆している。TE野とそれに投射するTEO野のスポットは高い相関を示していたものの、TE野のスポットは、顔の構成パーツ(目、鼻、口)をシャッフルしたもの(シャッフル顔)よりも顔に対して有意に強く反応していた。しかし、この傾向は、この部位に投射するTEO野のスポットにはなかった。また、TE野と投射TEO野スポットは、顔と食べ物を見せた時には高い相関を示したが、シャッフル顔と食べものを見せた時には、相関が低下する傾向を見せた。これらの結果と、報告されているTEO野の小さな受容野あわせて考えると、TEO野は顔の部分の情報をTE野に送っているという考えを支持すると思われた。事実、TEO野において、reduction processを用いてcritical featureを決めると、サルの髪のtextureや、目と思われるfeatureである例が観察された。
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