研究概要 |
レビー小体型認知症(DLB)やパーキンソン病(PD)では,顔の幻視がよくみられる.また壁のしみなど顔でないものが顔に見えて仕方ないパレイドリアという現象や,顔はその人なのだが瓜二つの偽者であると信じる妄想性誤認がしばしば生じる.これらの現象の背景にある異常はヒトの完全な顔認知に不可欠の機能を障害していると考えられる.本研究課題の目的は,PDとDLBにみられる1)顔の錯視(顔が見える),2)顔の幻視(顔に見える),4)顔の誤認(顔を見誤る)という異常を検討することで顔認知の神経基盤およびその病理を検討した. 本研究では,ます具象的画像や,ランダムノイズやX=1/f^2,X=1/f^3で分布するノイズ課題を作成して,DLB患者を対象として探索的に予備実験を行ったところ,x=1/f^3で分布するノイズ課題がパレイドリア誘発に最適な刺激出あることを見いだした.次にパレイドリアを生じさせるx=1/f^3で分布するノイズによる刺激課題を複数作成し,DLBおよびPD患者,対照として健常高齢者やアルツハイマー病(AD)患者に施行した.その結果パレイドリア現象はDLB患者>PD患者>AD患者=健常高齢者の順で誘発されやすく,DLB患者では対照群に比べパレイドリア反応が有意に高かった.DLBおよびPD患者におけるパレイドリア反応の内容は,人と動物がそれぞれ約半数であった.DLB患者においては,幻視の存在とパレイドリア反応の頻度に関係も示唆された.
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