公募研究
本研究では、ヒトが怒り顔を早く検出するという現象が、ニホンザルでも見られるかを検討するというものである。H21年度は計画にしたがい、実験で使用するサルの表情の撮影と、遺伝子の採取・分析を行った。1) サル表情撮影:実験で用いるサルの顔として、中立な顔、怒り顔、服従をしめす3種類の表情を、同一個体から各8枚以上になるように、サルを個別に実験箱に入れて撮影・加工した。さらに、優位個体、劣位個体、中位に位置する個体が必要なため、合計7個体のサルの顔を撮影・加工した。2) サルの遺伝した多型性の解析京都大学霊長類研究所のニホンザル24頭から血液サンプルを抽出し、PCR法でDNAを増幅した後、ターゲットとなる特定DNA領域のシークエンスの読み取りを業者に委託して行った。2個体のデータが読み取り不能であったため、以下の報告は22個体のシークエンスに基づいている。当初のターゲットであったセロトニントランスポーターのプロモーター領域(5-HTTLPR)に長短の多型はなく、全個体がアカゲザルのL型に相同な配列であったが、3か所に一塩基置換多型(SNP)が見つかった。上記の解析に加え、脳内のセロトニン量に影響を与える可能性があるDNA領域として、セロトニンコード領域に隣接する非翻訳領域およびモノアミン酸化酵素A遺伝子(MAOA)のシークエンスも解析した。MAOAには繰り返し配列が認められ、7回、6回、5回の多型が確認できた他、5か所のSNPも見つかった。また非翻訳領域においても少なくとも5か所のSNPが見つかった。H22年度は、読み取り不良であった個体のデータの再解析を依頼するとともに、行動実験を実施し、こうした繰り返し配列やSNPとの関連を分析する予定である。
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行動科学 48(2)
ページ: 133-142