研究概要 |
本研究では、顔知覚における空間情報の処理の発達について、乳児を対象とした行動実験により検討する。顔知覚は、空間情報の処理とは異なる、脳内の特定部位で処理される(Kanwisher et al.,1997;McCarthy et al.,1997)。だが一方、眼・鼻・口などの要素の位置関係が重要とも示されており(Leder & Bruce,2000)、空間情報の処理も重要と言える。乳児の顔知覚においては、静止画よりも動画で処理が促進されることをふまえ(Otsuka et al.,2005)、静止画と動画を比較する。 本年度は,生後2-3ヶ月の乳児を対象に「両眼と口という,要素の配置が顔と同じ図」と「図の上部分に要素が多いが顔には見えない図」との選好を調べた.乳児は、生後まもない新生児でも強い顔選好を示す。これは図の上部分に要素が多い(top-heavy)図を選好するためとされている(Simion et al.,2002)。実験の結果,静止画では選好は示されなかったが,両眼と口が開閉するような動きを加えると,「顔」を「top-heavyであるだけの図」よりも選好注視され,生後2-3ヶ月の乳児は顔らしい要素の配置への選好を有することが示唆された.この実験結果は学会で口頭発表を行なった。 また,顔認知の領域会議と心理班第1回研究会(世話役:立命館大学北岡明佳教授)に出席し,多くの顔研究者と交流し,助言を受けた.さらに,世話役として心理班第2回研究会を開催し,琉球大学の遠藤光男教授・岩手県立大学の桐田隆博教授を招聘し,顔認知に関する研究についてご講演いただいた.その翌日には研究室をご見学いただき,助言をうけた. さらに、顔知覚をはじめ,乳児の知覚に関する多くの研究実績を持つミネソタ大学のヨナス教授の研究室に滞在し、データ解析・今後の実験計画に関する助言を仰いだ。
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