顔の個々の評価的次元が魅力などの総合的な高次印象に与える影響を仮定して、顔の印象認知の特性を心理学的な観点から検証した。ネガティブな印象を強く持つ悲しみ顔(ネガティブ形態)、ポジティブな印象を強く持つ幸福顔(ポジティブ形態)、および特定の強い印象を与えない真顔(ニュートラル形態)の3種類の顔画像を呈示刺激とする評定実験で得られた心理データに対する多変量解析の結果、その結果、ポジティブ形態では柔和や美的な評価次元が魅力認知に関わる重要な要因となるが、ネガティブ形態の場合は美的評価が主要な要因となることが示され、表出形態の違いによって魅力評価に関わる心理印象要因が変わる可能性が示された。本研究成果は、顔の魅力認知の多面性を考察する意義を示すものとしてまとめられ、日本知能情報ファジィ学会誌(知能と情報)に採録となった。 また、工学的な画像生成技術により顔の肌色と化粧品の色(アイシャドウ・チーク・リップカラー)の組合せを系統的に変化させる化粧合成顔を作成し、化粧品配色がもたらす印象効果と個々人の美意識(理想的な化粧顔イメージ)との関係を評定実験によって検証した。実験の結果、紫・赤・橙のアイシャドウカラーは理想的な化粧顔イメージに近づけるための重要な要素となるが、理想的な化粧顔イメージに近い高評価なアイシャドウカラーでもリップカラーに依存して顔の印象評価が低下したり、肌の明るさによって高評価のアイシャドウカラーが異なることが確認された。すなわち、肌の明るさやリップカラーが顔の印象に与える影響は、アイシャドウとの組合せによって変わることが示された。本研究成果は、化粧使用者の美意識に基づく化粧品配色デザインの重要性を示すものとして、第6回日本感性工学会春季大会にて発表された。
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