研究概要 |
これまで他人種効果を扱った研究では現象を記述的に報告したものが大半であり,その生起因をシステマティックに検討したものは見当たらない.本研究では顔認知における他人種効果について,顔情報処理のストリームにおける複数のステージを詳細に分析する.実験結果から,顔認知におけるストラテジー,処理効率性,内部ノイズに関して自人種顔弁別,他人種顔弁別間で比較し,他人種効果がどの処理ステージに起因するかを明らかにすることを目的とする.本年度はまず本研究で用いる顔画像刺激データベースの作成し,その後,空間処理ストラテジー,処理効率性,内部ノイズを同時測定し,顔認知他人種効果を検証するための実験をClassification image測定実験をベースに構築することを目標とした。予備的実験では,CI法によって顔のどの空間位置情報を用いているかという処理ストラテジーをピクセル単位で明らかにし,自人種,他人種顔弁別間に差異があるかを検討した。実験データから,日本人被験者は外国人顔の弁別の際には目眉領域を強く利用し,日本人顔弁別では利用する箇所は一貫していないことが明らかとなった。また同時に,反応決定に関わる内部ノイズの推定(Burgess & Colborne,1988 ; Gaspar,Bennett,&Sekuler,2008)に関しての予備的データも収集したが,充分な解像度のデータを得ることができなかった。そのため,実験システムを精査したところ,実験システム・装置の大幅な改良が必要であることが判明した。特に,ストラテジーと内部ノイズ推定の精度を向上させるための改良に注力した。
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