平成21年度は、エアロゾル測定地域の選定を行い、エアロゾル濃度が異なると思われる地域での樹木葉の表面への影響および森林衰退地での健全木および衰退木の生理的機能を調査した。 1.エアロゾル測定地域の選定 エアロゾルの測定地域は、都市部中心(札幌市中心部)、都市部郊外(札幌市郊外)および冷温帯林(摩周湖)を選定し、測定の準備を行った。来年度はこれらの地域でエアロゾルの測定を行う予定である。 2.エアロゾル濃度が異なると思われる地域での樹木葉の表面への影響 エアロゾル濃度が異なると思われる都市部中心(札幌市中心部:北海道大学札幌実験苗畑)と都市部郊外(札幌市郊外:森林総研北海道支所)に生育するシラカンバの葉を採取し、葉の表面を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果、両地域で採取したサンプルはともに葉の表面に生物起源のものと人為起源のものと思われる粒子が付着していたが、特に札幌市中心部の試料では葉の裏面(北軸面)に人為起源の粒子が多く付着していた。これらは葉の生理機能(おもに光合成)に影響すると考えられる。今後、これらの粒子がエアロゾル由来かどうかを分析する予定である。 3.森林衰退地での健全木および衰退木の生理的機能 北海道東部の摩周湖外輪山において、ウダイカンバの健全木および衰退木の生理的機能を評価した。その結果、衰退木では健全木と比較して、春葉の面積が有意に小さく、8月後半には葉の可視障害が生じ光合成権能が低下した。衰退の原因についてオゾンやエアロゾルが考えられるが、今後調査を行う予定である。
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