研究概要 |
【目的】長崎において黄砂が死亡率に及ぼす影響を明らかにするため、以下のデータを収集した。【方法】1)黄砂データ:「気象庁」長崎海洋気象台において1990年-2006年に観測された黄砂日。「ライダー」長崎市において2003年-2006年にライダーで観測された高度120-900mの黄砂消散係数の日中央値をもとに黄砂日を定義した。2)気象データ:同気象台で観測された同時期の気象データ。3)大気汚染物質濃度:長崎市内の大気汚染観測局(一般局)におけるSPM、光化学オキシダント(Ox)、二酸化窒素(NO2)の日平均濃度。4)死亡データ:被爆者コホート(長崎市居住)から死亡日・性・年齢・死亡原因・既往疾患・喫煙などの情報を抽出した。統計解析:一般化線形ポワソン回帰モデルを用いて時系列解析を行った。黄砂日を指標変数、大気汚染物質(SPM,Ox,NO2)を連続変数、気象(気温、湿度)のnatural cubic spline、年・月・曜日・休日を指標変数としてモデルに投入した。【結果】総死亡は黄砂により4.1%(95%信頼区間:-8.4,18.4)増加(当日)、循環器系疾患死亡は13.8%(同:-9.4,42.9)増加(当日)、呼吸器系疾患死亡は1.6%(同:-25.9,39.1)増加(当日)を認めた。いずれも統計学的有意差はなかった。年齢、慢性疾患、喫煙習慣によるサブグループ解析ではいずれも統計学的有意差のあるリスク上昇は認めなかった。ライダーによる黄砂日を用いた解析では、総死亡は黄砂により12.9%(同:-24.6,69.1)増加(ラグ2日)、循環器系疾患死亡は-3.2%(同:-55.4,110.0)増加(ラグ2日)、呼吸器系疾患死亡は40.6%(同:-39.9,228.9,増加(当日)を認めた。【結論】黄砂日では循環器疾患死亡および呼吸器疾患死亡の増加を認めたが、統計学的有意差はなかった。ライダーまたは気象庁の黄砂定義により推計値が異なり、いずれにおいても死亡との関連のエビデンスは得られなかった。
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