研究概要 |
本研究は、黄砂の健康に対する急性影響を評価するために、長崎において、黄砂飛来日と非飛来日における粒子状物質(SPM)濃度と救急外来受診との関連について明らかにすることを目的とする。 予備調査として、文献レビューおよび、福岡における呼吸器疾患のデータを用いた解析を行った。 本調査として、平成21年度にはまず、長崎市救急実態調査の救急搬送データ、長崎市内の5か所から得た大気汚染物質濃度データ、気象庁HPからの黄砂飛来データを組み合わせて解析用データベースを作成した。次に、黄砂日、非黄砂日における各大気汚染物質濃度を比較した。SPM,他のガス状汚染物質について黄砂日の濃度が有意に高値であった。 黄砂飛来と救急搬送との関連について検討したところ、黄砂当日には、救急搬送リスクの上昇はみられなかったが、翌日、2日後のリスクが上昇し、黄砂日から2日後までの救急搬送リスクは、4.59%(95%CI : 0.71, 8.61)上昇した。SPM濃度と救急搬送リスクについては、当日のSPM濃度(10μg/m^3)上昇により、リスクは0.77%(95%CI : 0.16, 1.38)増加した。救急搬送当日~2日前までに黄砂が飛来した場合とそうでない場合のSPM(当日~2日前の平均)濃度と救急搬送リスクとの関連について比較したが、有意な違いはみられなかった 現時点での解析結果より、黄砂の飛来により救急搬送リスクが増加することが示された。このリスクの増加は、黄砂飛来によるSPM濃度と関連している可能性があると思われる。本検討では、地域汚染由来のSPMと黄砂由来のSPMとの分離が難しいため、ライダー観測による黄砂消散係数などの指標を用いた検討が必要と考えられた。
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