研究概要 |
サンゴの白化の原因のひとつは,様々なストレスにより褐虫藻の機能不全により引き起こされると考えられる.そこで,ストレスによる褐虫藻の変化をタンパク質から観察することを目的とした。本年度は,タンパク質量の再現性と構造解析方法について検討した.まず,褐虫藻からタンパク質を効率的に抽出するために,褐虫藻培養液にトリクロロ酢酸を加えて沈殿させた後,超音波破壊を行なった.次に,2次元電気泳動で,タンパク質を検出するため,褐虫藻の細胞数について検討した.褐虫藻は,2つの形態,すなわち遊泳可能な形態と球状の形態,を持つ.両者からタンパク質を抽出したところ,夜間に見られる球状の形態で,より多くのタンパク質量が得られることがわかった.そこで,球状の褐虫藻を用いて,二次元電気泳動で分析するのに必要なタンパク質量を検討した.その結果,100万細胞の球状の褐虫藻が必要であることがわかった.2次元電気泳動では,通常の泳動条件では,十分に等電点に集まらなかったが,塩の除去のための泳動時間を長くし,泳動をゆっくりと行うことにより,タンパク質の分離能が向上した.また,PVDF膜上のタンパク質について,N末端配列分析を検討したところ,5pmol程度のタンパク質量までならば,配列分析を行うことができるとわかった.PVDF膜上に転写したタンパク質をリシルエンドペプチダーゼおよびトリプシンで消化したところ,5pmolまではPMF解析に用いるデータを得ることができた.以上の結果から,褐虫藻タンパク質の二次元電気泳動方法,およびスポットの分析方法を決定することができた.
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